AVアンプの選び方
テレビやレコーダー・スピーカーなどのAV機器をつなぎ、映像と音声管理をするのがAVアンプの役割です。特に重要なのは、家庭でサラウンド音声(立体音響)をベストな状態で再生するには必須だということ。ここでは、AVアンプの基礎知識や、「5.1ch(チャンネル)」「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」など、サラウンドの規格についても解説します。
2026/6/30 更新
目次
自宅で映画館のような迫力あるサラウンド(立体音響)を楽しむための核として活躍するのが AVアンプです。映像や音声信号の入出力、音量や音色の調整など多彩な役割を担います。似た役割を果たす製品としてサウンドバーがありますが、「ベスト」と言える再現性を得られるのはAVアンプに複数のスピーカーをつないだ場合だけと言えます。

AVアンプは、室内に配置された「5.1ch(チャンネル)」などのスピーカーを通して、迫力満点のサラウンド(立体音響)を再生できます。誤解を恐れずに言えば「映画館のような」音に包まれるということ。現在はNetflixオリジナル作品など、映画館では観られない「映画」作品もありますから、自宅で「映画館のような」音響効果が得られることの価値は高まっています。しかも、自宅ならば再生コンテンツは自由。映画だけでなく、テレビ放送やゲームなども迫力満点に楽しめます。

「映画館のような」サラウンド再生は「Dolby Digital」や「DTS」といった特定の規格に支えられています。これらのエンコード(符号化/圧縮)されたデータをデコード(復号/解凍)することで、複数スピーカー用に記録された音声を再生するのです。これがAVアンプが担う特に重要な役割だと言えます。「Dolby Atmos」など、個別の規格については後述します。

上述のとおり、サラウンド音声を再生できること、映像信号を扱えることがAVアンプの特徴です。踏み込んで言えば、映像作品(映画やゲーム)と音楽両方を楽しめるのがAVアンプということ。純粋に音楽だけを楽しみたいのであれば、音声信号の処理に特化したプリメインアンプも検討するとよいでしょう。

サラウンドチャンネル(ch)数とは、AVアンプに接続するスピーカーの台数のこと。スピーカー1本が「1ch」、サブウーハー1本が「0.1ch」と数えられ、最新製品では「5.1ch」(スピーカー5本とサブウーハー1本)が基本です。この本数のスピーカー接続が必須というわけではなく、これはAVアンプに接続できる最大値です。スピーカーの本数が増えるほど高い再現性を期待できますが、音響調整という意味での設置難易度は高くなります。環境に合わせてスピーカーの本数を検討しましょう。「7.1ch」以上のほとんどのモデルで三次元立体音響「Dolby Atmos」の再生にも対応しています。詳細は個別に確認しましょう。
サラウンドチャンネル数で選ぶ
米国ドルビーラボラトリーズ社による音声のデジタル圧縮・再生の方式で、DVD、ブルーレイなどのディスクや配信映画、ゲームなど採用例の多い規格です。基本となる5.1chの「Dolby Digital」から最新の「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」まで種類はさまざま。エンドユーザーとしては「Dolby Atmos」に対応しているかどうかだけを確認すれば十分です。
| 規格 | 概要 |
|---|---|
| Dolby Digital | 基本となる5.1ch規格 |
| Dolby Digital EX | 基本の5.1chに試聴者の真後ろに置く「サラウンドバック」chを追加した6.1ch規格 |
| Dolby Digital Plus | 最大7.1chサラウンドに対応する規格。現在でも配信などで大いに利用されている |
| DOLBY TrueHD | ブルーレイなどに採用される高音質の音声規格で、理論上圧縮前と同じ状態に戻せる「可逆圧縮」であることが特徴。192kHz/24bitの音声を収録でき、7.1chにも対応する |
| Dolby Atmos | 「オブジェクトベースオーディオ」という概念を導入した三次元立体音響規格。従来の5.1chや7.1chに加え、天井へのスピーカー設置を前提としていて、天井スピーカーからは部屋に合わせて最適化された音が発せられる |
米国DTS社による音声のデジタル圧縮・再生の方式で、「Dolby Digital」同様、DVD、ブルーレイなどのディスクや配信映画などで採用されています。現在はDolbyが優勢ですが、最新のAVアンプであればどちらにも対応しているのが当たり前です。AVアンプ選びという意味では、「DTS:X」に対応しているかどうかだけを確認すれば十分です。
| 規格 | 概要 |
|---|---|
| DTSデジタルサラウンド | 基本となる5.1ch規格 |
| DTS-ES | 基本の5.1chに試聴者の真後ろに置く「サラウンドバック」chを追加した6.1ch規格 |
| DTS-HD High Resolution Audio | 最大7.1chサラウンドに対応する規格。96kHz/24bitのハイレゾにも対応するがあくまで非可逆圧縮(デコードすると理論上元に戻る可逆圧縮ではない)規格 |
| DTS-HD Master Audio | ブルーレイに採用例の多い高音質の音声規格で、理論上圧縮前と同じ状態に戻せる「可逆圧縮」であることが特徴。最大192kHz/24bitの音声を収録でき、7.1chにも対応する |
| DTS:X | Dolby Atmosと競合するDTS社の最新フォーマット。やはり「オブジェクトベースオーディオ」を採り入れた技術で、天井スピーカーの配置はDolbyよりもゆるやかな基準で定義されている |
DSDとは、Direct Stream Digitalの略で、音声をデジタル化する方式で、右で紹介するハイレゾの一種でもあります。ソニーとフィリップスが開発し、スーパーオーディオCD(SACD)で採用されました。1秒間に数百万回をサンプリングする1bitデータを記録する方式で、CDなどで使われるPCM(マルチビット)方式とは異なる仕組みを採用しています。
ハイレゾとは、ハイレゾリューション(高解像度)の略。 「ハイレゾ音源」とは、CDに収録されるデジタルデータを基準としてそれよりも高解像度音源のことです。具体的にはCDのデータ44.1kHz/16bitよりも高解像度な96kHz/24bit音源などがこれにあたります。AVアンプには、こうした「ハイレゾ音源」の再生に対応した製品もあります。
AVアンプカテゴリーで言う「AAC」とは、テレビ放送で使われる音声の圧縮形式のこと。具体的には「MPEG-2 AAC」「MPEG-4 AAC」を指しています。デノン、マランツ、ヤマハ、ソニーなどの主要メーカーの最新製品はほぼ間違いなく「AAC」のデコードに対応していると言えます。海外製品ではまれに「AAC」デコード非対応という場合があることに注意が必要です。ただし、この場合も組み合わせるテレビ/レコーダーの設定次第で音声の再生は可能です。
オーディオブランドとして有名なデノンは、日本では株式会社ディーアンドエムホールディングスが運営しています。その特徴は、オーディオ専業ブランドらしいハードウェア的な作り込みのよさ。また、低価格から高価格まで、予算に応じて充実した製品を選べる数少ない存在でもあります。現在、最も充実した製品群を揃えていると言えます。AVアンプ選びに迷ったら、ひとまずデノンをチェックしてみるとよいでしょう。なお、後述するマランツも同一会社が運営しており、両社は姉妹ブランド関係にあります。AVアンプにおいてはHDMIの仕様や機能性を共通化したうえで、それぞれに音質の個性がある製品を多数ラインアップしています。
デノン/マランツに次ぐ充実度を誇るAVアンプメーカーがヤマハ。現在でも最新規格に対応した新製品をリリースする数少ない存在のひとつです。「音場創生」という発想で積極的にサラウンド効果を付加していく姿勢は唯一無二と言えます。「原音忠実」を追い求めるマニアには相容れない世界観かもしれませんが、映画再生時の臨場感や没入感を求める人はまずチェックするとよいでしょう。
1953年にアメリカで設立されたオーディオブランド。デノンの項目で紹介したとおり、現在はデノンとマランツは姉妹ブランドにあたり、両ブランドの研究施設は日本国内にあります。やはりオーディオ的な作り込みのよさが魅力ですが、デノンとは一味違った薄型モデルや、あえてパワーアンプを内蔵しない「AVプリアンプ」など独自の製品をラインアップ。両ブランドは異なる方法論でよい音、よいサラウンドを追求しています。
AVアンプは、さまざまなAV機器で構築される自宅のホームシアター全体をコントロールし、室内に最適なリスニング環境を整えます。ここでは、AVアンプの主な機能をご紹介します。
AMやFMなどのラジオ放送が受信できるチューナーです。AVアンプのなかにはこうしたチューナー機能を内蔵した機種もあり、チューナーを内蔵する製品を「レシーバー」と称することがあります。
AVアンプが、Bluetooth(レシーバー)対応であれば、スマートフォンやタブレット、PCなどとワイヤレスで接続できます。スマートフォンなどで再生した音楽をAVアンプで楽しめる便利な機能です。
無線LAN規格のひとつです。Wi-Fi対応機器ならメーカーに関係なく家庭内のネットワーク(LAN)に接続できます。最新のAVアンプはSpotifyやAmazon Musicなどの音楽ストリーミングサービスに対応しているモデルもあります。そうしたネットワークサービスを利用する場合に便利な機能です。
iPhone、iPadなどで再生しているコンテンツを家庭内のネットワークを経由してほかの機器でストリーミング再生する機能です。対応機器であれば、iPhone、iPadなどに収録された音楽をAVアンプでも楽しめます。
解像度が3840×2160や4096×2160画素の「4K」映像信号を伝送(パススルー)できる機能のこと。最新製品ならば基本的に対応していると思って間違いありません。
USBは、さまざまなPC周辺機器を接続するための端子です。AVアンプに搭載されているUSB端子の多くは「Type-A」と呼ばれる形状で、USBフラッシュメモリーなどに保存された音楽ファイルを再生できます。対応ファイルは製品次第。本機能を使いたい場合は確認が必須です。
ARCは「Audio Return Channel」の略。AVアンプとテレビ/プロジェクターはHDMIでつなぎ、主にプレーヤーやレコーダーからAVアンプへ入った映像を「出力」します。このとき、ARCに対応していればテレビで再生したコンテンツの音声を戻して再生(Return)できる便利な機能です。現在のAVアンプはARC対応と思って間違いありません。
eARCは「Enhanced Audio Return Channel」の略。「ARCの拡張版」という意味の示すとおり、最新の音声フォーマットを「ARC」と同じようにテレビ/プロジェクター側からAVアンプへHDMI接続で伝送可能。より高品位な音声データの伝送を実現しています。
「ARC」「eARC」について詳しく知りたい方へ
現在はほとんどのテレビやオーディオ機器が「ARC対応」のHDMI端子を搭載しており、HDMIケーブル接続1本で、テレビが受信している放送の音声や、HDMI入力している音声(つまり映像と対になっている音声)をオーディオ機器側へ簡単に伝送し、再生できるようになっています。以下の記事では、「ARC」や、より高品位の音声フォーマットに対応した技術「eARC」について詳しく解説しています。
HDRとは「High Dynamic Range」の略。映像に記録できる明るさ情報(輝度)の幅(レンジ)を拡大する技術です。AVアンプがHDRに対応していれば、HDR映像を安心して伝送できます。
各スピーカーを設置後に、最適な視聴ができるようAVアンプが自動的に出力音をチューニングしてくれる機能です。付属のマイクを使ってスピーカーの有無やサイズ、距離、音量などのデータを測定し調整してくれます。
ストリーミングとは、インターネット上のメディア(音楽や映像など)を再生する技術のことです。現在のAVアンプでは、サブスクリプション型(定額制)の音楽ストリーミングサービスを利用できる場合があります。本機能に対応していれば、専用アプリなどを使ってAVアンプで音楽再生が可能です。各AVアンプが使いたいサービスに対応しているかどうかは個別に確認しましょう。
多数のAV機器を接続し、サラウンド再生の核となるのがAVアンプです。そのため、さまざまなタイプの入出力端子に対応している必要があります。

CDプレーヤーなどの音声をデジタル信号で伝送するための端子。ケーブルに光ファイバーを使っているため、この名前で呼ばれています。
ビデオデッキなどから、アナログの映像信号を伝送するための端子。映像用には黄色のRCAケーブルを1本使うのが一般的。現在では需要が減ったことから、AVアンプでは省略されることの多い端子です。
コアキシャルとも呼ばれる端子で、音声をデジタル信号で伝送する端子です。アナログ音声伝送のための端子と同じ形状のRCA端子(ピンジャック)を用いています。
アナログ音声を扱う端子はさまざま。最も一般的なのは、赤白のジャックが使われることの多いRCA端子(ピンジャック)。このほか、「XLR」や「バランス」と呼ばれる入出力端子もあります。なお、PHONO(フォノ)と書かれている入力端子は、レコードプレーヤー用です。
メーカーによって定義は異なります。
一般的に、定格出力はそのアンプが連続して出力できるパワーのことを、最大出力とは定格出力を超えて瞬間的に出力できるパワーのことを言います。基本的には定格出力を参照するとよいでしょう。また、AVアンプは多数のアンプを内蔵しています。そのうちの1つだけを抜き出した数値なのか、2つを抜き出した数値なのか、それともすべてを同時駆動したときの数値なのか、それぞれに示されている場合もあります。
製品グレードや自宅環境によります。
同じグレード(価格)のアンプを選んだ場合、音の再生に特化したプリメインアンプのほうが、音質に有利な要素が多いと考えられます。ただし、これを生かすには高性能なスピーカーはもちろん、音の響きをコントロールした部屋(環境)も必須。高級製品を買えばよい音が手に入るわけではないことには留意しましょう。また、AVアンプのよいところは、(ほとんどの製品が)自動音場補正機能を持っていること。マイクによる計測とデジタル補正で部屋に合わせた音質の最適化を図れます。環境によってはこの機能を使ったほうがよい結果を得られることもあるでしょう。
イネーブルドスピーカー
正式名称は「Dolby Atmos Enabled Speaker(ドルビーアトモスイネーブルドスピーカー)」。三次元立体音響規格「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」には、天井に設置するオーバーヘッドスピーカーの存在が定義されています。しかし、天井へのスピーカー設置は難しいもの。そこで考えられたのがイネーブルドスピーカーです。床に置いたスピーカーから上方向へ音を放射し、天井へ設置するスピーカー代わりとして扱うのです。フロントやサラウンド(リア)スピーカーの上に載せて使う製品が一般的です。
ディスクリート回路
多数の電子部品を集積したIC(集積回路)ではなく、電子部品単体を個別に組み合わせて作られた回路のこと。相応にコストはかかりますが、個々の部品や回路について吟味できるというメリットがあります。
DSP機能
DSPとは「Digital Signal Processing」の略で、デジタル音声信号を処理することです。AVアンプでは主に音質補正を行うことを指します。
HDCP2.2
HDCPはHDMIなどで映像伝送するときに用いられる著作権保護規格で、その最新バージョンがHDCP2.2です。AVアンプが4Kテレビに対応するには、最新の4Kテレビやレコーダーなどに採用されているHDCP2.2および4K/60p(YCbCr 4:2:0)映像信号を伝送できる、HDMI2.0以上の規格の入出力端子が必要になります。
NAS
NAS(Network Attached Storage)とは、ネットワークを通じてアクセスできる外部記憶装置(ストレージ)のこと。動画や音楽などのデータの保存先として利用できます。ネットワーク経由でのオーディオ再生に対応したAVアンプを使えば、NASから音楽ファイルを読み出し、再生も可能です。